新興VCの企業の育て方、知られざるVCの手数料体系を探る

これまで私たちは、新規の投資や新しいスタートアップの資金調達に関する話を数多く伝えてきたが、ベンチャー投資会社のキャッシュフロー問題についてはあまり触れてこなかった。そこを今日から改めよう。

ベンチャー投資会社を新規に立ち上げるのは、非常にハードルの高い挑戦となる。資金調達のための途方もなく膨大な作業だけに留まらない。同じ契約条件のリミテッド・パートナー(LP)を確保するだけで2年かかることもある。さらに新しい投資会社の経済状態は、多くの場合はとても悲惨だ。

ここでひとつ、業界でよく引き合いに出される(とはいえ、それほど一般的ではない)、2&20報酬モデルを採用した、2人のジェネラル・パートナーからなる投資会社が、初めて2000万ドル(約2126億円)のシード投資を行った場合を想定してみよう。この投資会社は年間の管理手数料として2000万ドルの2%である40万ドル(約4250万円)を集め、会社のあらゆる出費をカバーしている。

これには、オフィスの家賃、従業員の給与、法的費用、税金の確定申告や会計に関する費用、さらには出張費用や投資家を喜ばせるための娯楽費も含まれる。そして残ったお金を2人のジェネラル・パートナーで給与として分け合う。会社設立から数年間は、パートナーの年収が5万ドル(約530万円)なんてことも珍しくない。または、まったく無報酬の場合すらある。これは、この業界が超裕福な個人に依存してしまう理由にもなっている。

この業界への参入を目指す若い投資家にとって、これはお寒い状況だ。だからこそ、設立当初の投資会社を自力で成功させようと、経営者たちは管理手数料体系の構築に大いに創造性を発揮せざるを得ない。

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このような投資会社の詳しい内情はほとんど口外されないのだが、Mike Rothenberg(マイク・ローテンバーグ)の一件のおかげで、私たちは新興投資会社の実際のデータから資産成長のための料金体系をどのように作っているかを知ることができた。業界の他の人たちとの話では、Rothenberg Venturesが採用していたモデルは、新しいフランチャイズの構築を目指す投資会社にとっては合理的で有効ものだという。

ここで示す分析に使用したデータは、すべてマイク・ローテンバーグに対する米証券取引委員会の訴訟(Case No. 3:18-cv-05080)の一環として、Rothenberg Venturesの評価を行った法廷会計士であるGerald T. Fujimoto(ジェラルド・T・フジモト)の専門家報告書別紙Aから引用している。この書類は2019年7月29日に作成された。この分析はRothenberg Ventureを批判するためではなく、今日の投資会社がどのような仕組みになっているかを示すためのものであるため、TechCrunchはこの法廷会計士の報告書の検証を行っていない。

下の表は、米証券取引委員会のマイク・ローテンバーグに対する訴訟で報告された同投資会社の仕組みを再構成したものだ。Rothenberg Venturesは、連続して4件のベンチャー投資を行い、慣習的な2&20モデルとは大きくかけ離れる手数料体系を用いていた。2&20モデルでは、投資先起業は10年の投資期間中に、2%の年間管理手数料を支払うことになる(投資会社によって体系は異なるものの、10年を超えて延長される場合は、それほど多額の手数料にはならないのが普通だ)。この計算からすると、管理手数料は通常、投資会社の出資約束金の20%となる。

米証券取引委員会によるマイケル・ローテンバーグ訴訟(別紙A)より

2013年
・運用手数料:投資金額の17.75%を一括前払い
・管理手数料:なし
2014年
・運用手数料:2年間の四半期ごとの各投資者の資本拠出の2%、投資契約期間の残り8年間の1年ごとの各投資者の資本拠出の0.5%、10年の投資期間の総計は20%
・管理手数料:なし
2015年
・運用手数料:10年間の投資資金の1.75%、2年ぶんの運用手数料を前払い、10年の投資期間の総計は17.5%
・管理手数料:10年間の投資資金の1%、投資初年に総計10%を支払う
2016年
・運用/管理手数料:各投資者の出資約束金の2.5%を運用手数料と管理手数料として10年の契約期間中に毎年支払う、10年の投資期間の手数料総計は25%

この会社の最初の投資では、ローテンバーグは260万ドルの投資が決定した時点で、時間をかけて少しずつ定期的に手数料から収入を得るのではなく、17.75%の手数料を一括払いさせることにした。それにより、同社には即座に47万ドルが舞い込むことになった。しかし、その後の継続的な手数料は徴収されない。この業界では、これほど多額な前払い金は珍しい。しかし、10年ぶんの投資運用手数料の文字通りの総額を初日に耳を揃えて支払うというのは、さらに珍しい。

LPの観点からすると、この手の手数料体系は同社が最初の投資が決定した時点で即座に追加資金を調達しなければならない状態であったと推察できる。将来のベンチャー投資の手数料は、最初の投資の数年先までの運用コストとして必要だからだ。要するにベンチャー投資家の自助努力とは、こういうものなのだ。

次に、2つ目の投資(2014年)を見てみよう。投資期間中に手数料を分散して受け取る従来の形にやや近づいているが、それでも前払い金に大きく比重が偏っている。合計で投資資金の20%を支払うという典型的な形式ながら、その80%は最初の2年間で支払うことになっている。ここからも、こうした自助努力により同社は、事業継続に必要な追加資金(従って運用手数料)を獲得できたことが暗に示されている。

2015年の投資でも同じパターンが見られる。手数料体系は正常になっているが、より積極的な前払いが要求されている。運用手数料に関しては毎年の支払額は均等になっているが、その手数料の2年分は投資が決定すると同時に支払わなければならない。同じく管理手数料も均等だが、投資初年に全額を支払うことになっている。

そして4つ目の投資(2016年)では、年間2.5%で前払いの決まりはないという、ずっと普通の形式に戻っている。これのどこが重要なのか?この数字が投資会社の運営にどのような意味をもたらすのか、手っ取り早く考えてみよう。

Rothenberg Venturesの推定運用手数料。緑は実際の手数料、オレンジは一般的な手数料(米証券取引委員会によるマイケル・ローテンバーグ訴訟(別紙A)のデータを引用)

見てわかるとおり、運用手数料の前払いは、その他の方法で得られたであろうものよりも、ずっと多くの資金をもたらしている。最初の3年間でおよそ510万ドルにもなる。年間2%の従来方式では120万ドルしか手に入らないところだ。もちろん、この自助努力のための工夫には後年にツケが回ってくる。投資運営のために使えるはずだった資金が目減りしてしまうのだ。

それでも、この前払い方式によって同社は実力よりもずっと高いところで勝負ができた。初年の手数料120万ドル(約1億2800万円)を加えて、実質的に6000万ドル(約64億円)の投資資金を得ることができた。まだ670万ドル(約7億1300万円)しか調達していないにもかかわらずだ。その後の数年間も、さらに積極的な手数料前払いのスケジュールで新たな資金を獲得し、実力を上回る勝負をしている。

もちろん、このようなアプローチには大きな重圧が伴う。一度に全部を賭けるやり方では、将来の資金調達を困難にするかも知れない誤差(連続して投資が失敗するなど)の許容範囲がほとんどない。脱出装置のないロケットのようなものだ。しかし、うまくいけばベンチャー投資界のトップになるまでの時間を劇的に短縮できる。10年早めることもできるだろう。

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結局のところ、ベンチャー投資家は賭けが好きなのだ。それも明らかに自分に賭けることを好む。だからこそ、こうしたキャッシュフローの最適化が新興企業の間に広がっているのだろう。自分の会社が失敗することを想定している人間はいない。それに、このような運用手数料体系は、金のない人間が投資会社を立ち上げるときの数少ないツールのひとつになっている。新しく投資会社を設立した者は、またベンチャー投資業界に飛び込もうと考えているその他の人たちも、未来の資金を担保にして、いま金を使うことのリスクとチャンスの微妙な部分を理解できなければ勝ち目はない。誠実さを保ちストレスを溜めないためでもあるが、証券取引委員会の捜査員や法廷会計士の世話にならないためにも大切だ。

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(翻訳:金井哲夫)

Source: TechCrunch Japan
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