月に民間探査機が到達する日、SpaceILから有人探査の復活まで

米国時間2月22日、イスラエルの月面探査機「Beresheet」がフロリダから打ち上げられた。もしミッションが成功すれば、民間としては初めて、そしてロシア(旧ソ連)や米国、中国に続く月面探査機の軟着陸の成功例となる。ここでは、Beresheetのミッションの経緯からその技術までを追ってみよう。

月面探査レースの参加チーム

スペースILは2011年に、非営利団体として設立された。その目的は、Xプライズ財団が運営しグーグルがスポンサーとなった月面探査レース「Google Lunar X Prize」に参加することだ。

Google Lunar X Prizeのレース目標は、民間チームが月面探査機を打ち上げ、月面を走行しつつ画像や動画を撮影。そして地球へと送信することだ。参加チームには月面探査機だけでなく、地球との通信モジュールの開発など高度な技術力が求められた。また、レースでは優勝チームに最高2000万ドル(約2200万円)が与えられ、賞金付きの中間目標も各種設定された。

2007年から始まったこのGoogle Lunar X Prizeには、世界各国から34チームが参加。途中で計画の進展により参加チームが選別され、SpaceILと米国のMoon Express、インドのTeamlndus、日本のHAKUTO、国際チームのSyneygy Moonが最後までレースに残った。しかし2018年4月、レースは達成者なしで終了したのだ。

達成チームが現れなかった大きな理由として、打ち上げが間に合わなかったことがあげられる。先述したチームはすべてロケットの打ち上げ契約にこぎつけていたが、結局スケジュールの関係で探査機が打ち上がることはなかった。

しかし、各チームの努力が無駄になったわけではない。SpaceILだけでなく、Moon ExpressやHAKUTOの運営チーム「ispace」、そしてTeamlndusやSyneygy Moonはそれぞれ独自に月面探査機を開発し、月へと打ち上げようとしているのだ。

極めて小さな探査機

Beresheetの大きさは直径2mかつ高さ1.5m、重量は585kgで、そのうちの400kgを燃料が占めている。これは有人探査機だったアポロ計画の宇宙船はもちろん、無人探査機のソ連のルナシリーズ、アメリカのサーベイヤーシリーズ、そして中国の嫦娥など、過去に月面に軟着陸した探査機よりもずっと小さく軽い。

Beresheetの打ち上げは米SpaceXの「Falcon 9」ロケットで実施された。インドネシアの通信衛星「Nusantara Satu」の副ペイロードとして搭載されたBeresheetは、予定されていた軌道に投入済みだ。そして月面に近づいたBeresheetはエンジン噴射により4月11日に軟着陸し、数日間の稼働を予定している。このように稼働期間が短い理由は、熱調整機構が搭載されていないためにオーバーヒートを避けられないと予測されているからだ。

そして、搭載した磁力計にて月の地磁気を観測。これにより、月の成り立ちについてのヒントが得られることが期待されている。その他にも、観測用にレーザー反射体やカメラを搭載している。

なお興味深いことに、Beresheetには「タイムカプセル」も搭載されている。このタイムカプセルにはWikipediaや聖書、子供の絵、ホロコーストの記録、イスラエル国歌、国旗、独立宣言書が封入されている。遠い将来、地球人や宇宙人が月の砂に埋もれたBeresheetを発見したときには、イスラエルという国の歴史を伝える貴重な資料となるかもしれない。

ますます加熱する月面探査

地球から一番近い天体の月では、さまざまな探査プロジェクトが進行している。

まず近年で最も注目を浴びたのは、中国の探査機「嫦娥4号」だろう。この嫦娥4号は2019年1月に史上初めて、月の裏側に軟着陸することに成功。現在は探査車「玉兎2号」を展開し、月面探査を実施している。さらにこの嫦娥4号や玉兎2号と地球との通信をリレーするために、中継衛星「鵲橋」をあらかじめ打ち上げるという力の入れようだ。

そして2019年4月には、インドの月面探査機「チャンドラヤーン2号」が打ち上がる。このミッションが成功すれば、インドは5番目に月面に探査機を着陸させた国となる。また2019年には民間企業のMoon Expressの探査機や、中国によるサンプルリターンミッション「嫦娥5号」の打ち上げなど、実に賑やかな1年となるはずだ。

その後の注目べきミッションとしては、中国が月の南極からのサンプルリターンを目指す「嫦娥6号」を2020年に実施する。そして日本も、高精度着陸実証機「SLIM(スリム)」を2021年に打ち上げる予定だ。

復活する有人月面探査

さらに2020年代には、月面探査に大きな転機が訪れるかもしれない。NASAは、2028年に人類を再び月に立たせるとの目標を発表したのだ。

かつて米国は「アポロ計画」にて、1969年から1972年まで宇宙飛行士を月へと送っていた。しかしアポロ17号を最後に、45年以上人類は月へと降り立っていない。2028年というタイムスケジュールが現実的かどうかは残念ながら不透明だが、我々は再び有人月面探査を目撃することができるかのしれない。

現在も月への着陸を目指し、宇宙を飛行し続けているイスラエルのSpaceIL。その計画は、民間企業による月面探査の第一歩目に過ぎないのである。

(文/塚本直樹 Twitter

Source: TechCrunch Japan
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