ファッションにAIを活用するということ

この夏の結婚式シーズン、僕はスーツを新調する必要に迫られた。スーツ選びに際し、冒険をしてみよう、これまで検討すらしなかった色のものを買おうと心に決めていた。その結果、僕は映画館の案内人のような、そして少しJidennaっぽいものを選んだ(編集部注:Jidennaは米国のラッパー歌手)。もし知っていたら、スーツを選ぶのにオーダーメードスーツ専門のEison Triple Threadを使っていたかもしれない。

誰かの助けを借りながらスーツをあつらえるというのはなかなか難しい。つくるときは、ボディのタイプや好み、他の関連要素も勘案しなければならない。それらのほかに、スーツ会社やデパートが取り入れていないような要素としては何があるだろうか。他社と差別化を図るために、Eison Triple Thread はFITSという顧客のライフスタイルや音楽の好みに基づいてウェブからテーラーメードを申し込めるサービスを始めた。

Eisonの創業者でCEOのJulian Eisonは、プレイグランドでよく遊ぶ子供で、彼の両親がEisonに見栄えのセンス、出歩くときはできるだけいい格好をするようにと教え込んだ。

「スタイルやカラーについて、服を着るとき僕はかなり気を使っていた」とEisonは言う。「僕はJordanを集めるような子供で、少しでも自分を格好良く見せたかった。というのも、ファッションが気になって仕方なかったから。成長するにつれ、どんどんファッションにのめり込んでいった」

プライベート・エクイティで6年間働いたが、彼はそこで売り手、買い手両サイドからのテックの流れを見ることができた。そしてEisonはファッションへの愛とテックへの興味を組み合わせることにした。2014年、Eisonはスーツを購入するのにデパートではない違う手段を自分の手でつくれないか、サンフランシスコの自宅のガレージで模索を始め、Eison Triple Threadをうみ出した。

「ビジネスを立ち上げた当時、いかに視覚化するかが主要な課題だった」とEisonは振り返る。「どうやったら体を視覚化でき、体にぴったりフィットするものを考えられるようになるか」。

スタイリッシュなデザインのスーツをオーダーメードでつくる会社は、Eison Triple Threadだけではない。Indochino、Bonobos 、Stitch FixなどはEison Triple Threadの前から事業展開しているが、いずれも目的は同じだ。だからこそ、どうやってライバルと差異を図るのか。そうした流れの中で、Eison Triple Threadが人工知能とSpotifyに行き着いたのはある意味当然のことだった。

「音楽というのは、日々の活動の中心にあるもの。国境や色などは関係なく、その人がどんなプロジェクトに携わっているのかといった普段知ることができないようなことも明らかにしていく」とEison は語る。「だから我々は本当にコアなものである音楽にこだわっている。音楽はその人の決断や選択、アイデンティティやムードにかかわっている」。

このサービスを使うには、まずユーザーは FITSシステムにSpotifyのIDでログインし、ライフスタイルに関する質問に答える。質問は、どんな産業に従事しているのか、仕事のときはどういう服装をしているか、どのような交通手段を利用しているのか、自由な時間は何をして過ごしているのか、自分自身を表す言葉は何か、といったものだ。こうした基本的な情報からデータを積み上げていく。

「ライフスタイルに関する質問は、その人のファッションや関心、好み、どんなことをするのが好きなのかといったことを把握するのが目的。それらを分析し、フィット感やスタイルについての情報を得る」。

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ユーザーがファッションに関する自分の好みなどについてできるだけ正直に答えている間に、FITSはAPIを通じてSpotifyであなたの音楽の好みを模索する。音楽のジャンルだったり、いつ音楽を聴く傾向にあるのか、どれくらいの時間聴くのかといったことなどだ。これらの作業にかかる時間はわずか15分だ。もっとも、僕のように自分を表すものを4つの選択肢の中から1つだけ選ぶのに時間がかからなければの話だが。内省的、情熱的、元気、エネルギッシュ、この4つの全てに僕は当てはまる。

クイズに全て答え終わったら、ウェブ画面はEisonが呼ぶところの“ルックス”のリストに移る。ルックスは、質問に対するあなたの回答から収集されたデータに基づいている。そのルックスは、EisonとプロダクトディレクターのDario Smithのお眼鏡にかなったものをベースに彼らが定期的に管理するイメージ・コレクションからアップされている。Eisonによると、直近ではデータベースに3000近くのイメージがあり、季節ごとに新しいものを加え、顧客に定期的に案内している。

顧客は、色のマッチングや生地の手触りを連想させるもの、その他のデータなどを含む写真のメタデータにアクセスできる。Eisonは、次のリリースでは顧客が必要な写真をアップロードすることで肌のトーンを特定できるようにする、と話す。加えて、ファッションの分布を理解するために写真メタデータを活用する。これらが使えるようになれば、アルゴリズムの精度をより高めるためにローカルのファッションやトレンドについて知見を得ることができる。

「なにがしらの数のスタイルがあるとして、それらを表現するものを持っていたい」とEisonは語る。「我々はそうしたイメージを集め、重要性や関連性に基づきながら定期的にアップすることができる」。

僕の方はというと、僕の音楽的な好みを引き出すために、バックグラウンドでSpotifyを動かしながら質問に答える。好みの音楽とは、ミュージカルのための曲(HamiltonsやRagtimes、Cabaretsなど)、Jidenna、Calle 13、Moanaからの選りすぐり(そう、その通り!)、Nathaniel Rateliff、 Night Sweats、そしてほんの少しの古い R&Bなどだ。

結果はというと、Eison databaseから引っ張ってきた幅広いレンジのスーツに身を包んだ、年代や人種、サイズが異なる25枚の写真だ(うち5枚が以下に)。僕はその写真のほとんどに興奮を覚えたが、僕の好みにしてはダブルボタンのものがやや多すぎた。それは僕のせいだと思う。しかし、そのスタイルは僕が絶対着たい、と思うものではない。もしくは、それがこのシステムのポイントなのかもしれない。自分には似合わないだろうと思い込んでいたり、着るなんて想像できないと感じている人にそうした新しいスタイルを提案する。

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提案されたものから何か1つ選ぶと、細部を詰める。ジャケットボタンの数やスタイル、ボタンホールの色、裏地の色や生地、ズボンの腰回りのスタイル、そのほかにも考えつくあらゆる点を含む。将来的には、スタイルを提案する写真に自分自身が登場するというのも可能になると僕は思う。

全ての選択が終わったら、採寸となる。自宅で自分で採寸してもいい。僕はEisonのスタジオにいたので、名誉なことにSmithがしてくれ、僕が考えもつかなかったような箇所の測定もした。たとえば、彼らは僕の姿勢や僕が腕を体側にどのように置くかといったことも考慮する。この経験で、僕は大人になってから着てきた服がなぜあまりフィットしなかったのかを理解した。

2週間後、スーツが届く。お店のラックから選んだものではなく、ライフスタイルや音楽の好みをもとに提案されたスーツだ。そのスーツはその人だけにぴったりとくる。僕のスーツもぴったりだった。しかし、それは採寸をもとにしているのだから驚きではない。ここで特別なのは、Spotifyと機械学習を活用しているということだ。FITSシステムは僕にライトグレーのスーツは避けたほうがいいとアドバイスしてくれた。これにより僕は自分のファッションにおける安全圏から足を踏み出すことになり、こうしたことがなければ着ることもなかったスーツを身にまとうことになった。

音楽ストリーミングとAIの助けを借りたスタイルというのは悪くない。

イメージクレジット: Eison Triple Thread

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(翻訳:Mizoguchi)

Source: TechCrunch Japan
ファッションにAIを活用するということ