サンフランシスコやマウンテンビューをインターネット上に構築する「リモート」アクセラレーターのPioneerとは?

ベイエリアの創業者達はリモートワークに取り憑かれている。シリコンバレーでは人材獲得に必要なプレミアムが暴騰し、事業のコストが急激に増加しているからだ。リモートワークを利用すれば、そうしたプレミアムを払わずに、資金や事業機会のネットワークにアクセスできるかもしれない。

Daniel Gross(ダニエル・グロス)氏は、シリコンバレーで得られる経営資源について誰よりも深く理解している。エルサレム生まれの同氏はY Combinator(ワイコンビネーター)の初期の成功例だ。YCに参加したAIスタートアップは、23歳のときApple(アップル)に4000万〜6000万ドル(約44億円〜66億円)で売却した。グロス氏はアップルで機械学習担当のディレクターを務めた後、YCにパートナーとして復帰した。

28歳のグロス氏は現在、自身のスタートアップであるPioneer(パイオニア)とともに、「リモート」(働く場所に関係なくさまざまな経営資源にアクセスすること)の未来のために、スタートアップアクセラレータモデルの改良に取り組んでいる。同氏はMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏とStripe(ストライプ)から支援を受け、シリコンバレー以外ではほぼ手に入らない資金調達手段や人材ネットワークへのアクセスを創業者に提供したいと考えている。

「ソフトウェアが世界を食っているように、『リモート』も大企業が形成される過程だけでなく、おそらくベンチャーの資金調達でも地球を食い尽くそうとしている」とグロス氏はTechCrunchのインタビューで語った。「Pioneerが行っている実験は、サンフランシスコやマウンテンビューといった都市をインターネット上に構築する試みだ」。

マーク・アンドリーセン氏はPioneerに初期から投資している

その高い目標を達成するために、スタートアップを立ち上げてから18カ月間でグロス氏が手を加えるべきことは多岐にわたった。プログラムの方式をReddit(レディット)のような賞金をかけたオンラインコンテストから「フルリモートスタートアップジェネレーター」と同氏が呼ぶものに変更し、創業者が会社設立後にリモートでY Combinatorに応募したりPioneerから資金を調達できるようにした。

「Pioneerは自然発生的にオンラインアクセラレーターの一種として活用され始めた」とグロス氏は言う。「それを新たな業務として立ち上げることを決心した。ゆくゆくは会社になるような取り組みに対し、資金を提供する仕事だ」。

Pioneerはすでに100人以上の創業者を支援している。創業者のソリューションには、リモートで働くメンバーで構成されるチームのための製品であるThere、デスクトップアプリジェネレーターのToDesktop、ソフトウェア検索エンジンのMetacodeなどがある。

Pioneerはこの取り組みを通して、さまざまな経営資源にアクセスしにくい国や地域の創業者らにその機会を提供したいと考えている。だが、シリコンバレーの他の投資家と同様、同社が支援する女性創業者の数は男性より少ない。同社のブログによると、同社が資金支援した起業家のうち女性は15%未満だ。

「当社は過小評価されている人々を探し出し、資金や助言を提供するためのエンジンだ。その多くは女性だと思われる。我々は常に女性創業者の意識を高める方法を考えている。当社はコミュニティと協力して女性の地位向上に取り組んでいる」とグロス氏はメールで答えた。「FrontのMathilde Collin(マチルド・コリン)氏やShippo(シッポ)のLaura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏のよう創業者が世界中に存在する可能性があり、当社はそうした創業者を発掘したいと思っている」。

Pioneerのリモートプログラムにおけるライブストリームディスカッションの1コマ

Pioneerのこうした動きの背景にはリモートワークとコミュニケーションツールの台頭があるが、真の要因はアーリーステージ向け投資の競争激化だ。メガベンチャーキャピタルファンドは人気のスタートアップへのプレシード投資を巡りしのぎを削っている。Y Combinatorに参加するスタートアップのサイズも大型化しているため、アクセラレーターが入り込む余地がほとんどない。アーリーステージのスタートアップ投資の世界が混み合ってくるにつれ、投資家はよりクリエイティブになる必要がある。グロス氏と彼を支援する投資家にとって、Pioneerはパイプラインの早い段階でディールフローを捉える機会でもある。

グロス氏自身のエンジェル投資家としてのポートフォリオには、GitHub、Figma、Uber、Gusto、Notion、Opendoor、Cruise Automation、Coinbaseなど、そうそうたるスタートアップが名を連ねる。

グロス氏によると当初は、Pioneerのプログラムに参加した創業者が資金調達に進むと、同社は最大10万ドル(約1100万円)を投資する権利を持っていた。だが会社設立に至るのは受賞者のわずか30%だった。Pioneer「2.0」では、参加者が会社持分の1%をPioneerに付与すれば1カ月のリモートプログラムに参加できる、という形を目指している。同社はその1%に対してキャッシュを拠出しないが、創業者のスタートアップ設立を支援し、専門家のネットワークを介してガイダンスを提供し、10万ドル(約1100万円)相当のクラウドクレジットや、創業者に対面での様々な機会を提供するためのサンフランシスコへの往復チケットなどの充実した特典をつける。

最大の進化は、プログラムを終了した創業者に用意する投資制度だ。Pioneerがスタートアップの事業の進捗に満足した場合、プログラム終了時にPioneerから直接資金調達するオプションを与える。創業者は2万〜100万ドル(約220万〜1億1000万円)の3つの金額から選択できる。

グロス氏は、Pioneerのポートフォリオ拡大で中心となっている投資額は2万ドル(約220万円)だと明らかにした。同社は投資と運営費用の両方を、グロス氏自身、アンドリーセン氏、ストライプからの調達資金(金額未公開)によって賄っている。同氏によると、同社がもっと大規模な投資をする場合に備えて追加で資金提供する用意がある投資家がいるようだが、あまりにも早期に多額の調達を行うことには慎重だと述べた。「過大な資金調達のマイナス面もよく知っている。当社は堅実かつ機敏にいきたい」とグロス氏は語った。

グロス氏はY Combinatorに取って代わろうとするつもりはない。選択肢が豊富にある創業者にとって、Pioneerからの投資は必ずしも最も魅力的ではないかもしれないと認識している。Y Combinatorはスタートアップに15万ドル(約1700万円)を投資して7%の株式を獲得する。一方Pioneerからの2万ドル(約220万円)の投資に対し、創業者は会社持分の5%を渡すだけではなく、最初にアクセラレータープログラムに参加する際にさらに1%を渡す必要がある。それにもかかわらず同氏は、素晴らしいアイデアを持つ多くの創業者にこの仕組みを利用してほしいと考えている。

「S&P 500に入るような会社ではないものの、Pythonスクリプトの段階でもがいているような素晴らしい会社がたくさんあると思う」

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(翻訳:Mizoguchi

Source: TechCrunch Japan
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