リスクをシェアする「P2P保険」本格展開へ、ITで保険業を変えるjustInCaseが約10億円調達

テクノロジーを活用した保険サービスを開発するjustInCase及びjustInCaseTechnologiesは12月9日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額で約10億円を調達したことを明らかにした。

今回はjustInCaseにとってシリーズAラウンドという位置付け。調達した資金を用いて、2020年に開始予定であるP2P型の「わりかん保険」を含む新商品の開発、保険APIなどを活用した他社との取り組み強化などに向けた人材採用やインフラ構築を進めていく計画だ。

なお本ラウンドに参加した投資家は以下の通り。グロービス・キャピタル・パートナーズら3社は2018年6月に発表された前回ラウンドからのフォローオン投資となる。

  • 伊藤忠商事
  • グローバル・ブレイン
  • ディー・エヌ・エー
  • 新生企業投資
  • SBIインベストメント
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ(既存投資家)
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan / 既存投資家)
  • LINE Ventures(既存投資家)

保険APIで事業拡張、P2P保険のサンドボックス認定も取得

TechCrunch Tokyo 2017卒業生でもあるjustInCaseは、保険数理コンサルティング会社Milliman出身の畑加寿也氏(現CEO)らが2016年に設立したインシュアテック(保険テック)スタートアップ。業界の知見とテクノロジーを組み合わせることで、これまでになかった新たな保険体験を提供しようというのが同社の取り組みだ。

昨年6月に関東財務局から少額短期保険業者として登録を受けた後、7月に開業。それまでテスト的に展開していたスマホ保険をアップデートする形で「ジャストインケース」をローンチしている。

このサービスではスマホの画面割れや故障、水濡れ、盗難紛失を月々356円からの保険料で補償する。アプリから約90秒で保険に加入できる手軽さに加え、独自の「安全スコア」によってスマホを丁寧に扱うほど保険料が安くなる仕組みが特徴。ジャイロセンサーなどから得られたデータを基にユーザーがどれほど丁寧にスマホを扱っているかをスコアとして算出し、スコアが高ければ更新後の保険料を割り引く。

このスマホ保険の展開に加え、今年7月に設立したjustInCaseTechnologiesを通じた事業もスタート。8月からは第一生命の開発したWebアプリ「Snap Insurance」に保険APIを提供し、アプリから1日単位で加入できるケガ保険の販売を始めている(第一生命が保険代理店としてjustInCaseの保険商品を提供)。

また7月にはjustInCaseが以前から構想として掲げていたP2P保険に関しても大きな進展があった。このモデルを取り入れた「わりかん保険」について「規制のサンドボックス制度」の認定を取得し、がん保険の領域にて正式展開できることになったのだ。

P2P保険は友人や同じ保険に関心のあるユーザーがグループを形成し、みんなで保険料を拠出しあうタイプの保険のこと。保険金の請求が行われた場合にはグループ内でプールされた保険料から保険金を支払う。ユーザー同士がリスクをシェアし、もしものことが起きた際には支え合う「シェアリングエコノミーの概念を取り入れた保険」という捉え方もできるだろう。

justInCaseが準備中のわりかん保険は“あと払い”型であることが1つの特徴。毎月、契約者全体の保険金の合計金額を算出し、契約者数で割った金額に管理費を加えたものが各ユーザーのあと払い保険料となる。

たとえば「2019年11月の保険金の合計金額が100万円、契約者数が1万人、管理費が30%」の場合、1人あたりの保険料は100万円÷1万人x1.3 =130円となり、この金額が12月分として事後請求される。ユーザーにとっては既存のがん保険よりも価格が安いことがメリットだ。

なお年齢によってもがんになるリスクは異なるため、ユーザーグループは年齢などの条件を基にサービス上で自動的に作られる仕様を考えているそう。わりかん保険料には上限金額が設定されているため、各ユーザーは一定金額以上を負担する心配はない。

アリババグループの「相互宝」は約1年で加入者1億人超え

日本ではまだ馴染みの薄いP2P保険だが、グローバルではインシュアテックの中でもホットな領域の1つとなっていてプレイヤーも増えてきている。

4月にソフトバンクグループらから3億ドルを調達した「Lemonade」やドイツの「Friendsurance」などが世界的にもよく知られているほか、近年は特に中国でP2P保険のサービスが盛り上がっている状況。アリババグループのアント・フィナンシャルが手がける「相互宝」は2018年10月のローンチ以降急ピッチでユーザーを獲得し、上海証券報の報道によると加入者が先月1億人を超えた。また畑氏の話ではテンセントが出資する「水滴互助」も8000万人以上のユーザー基盤を持つという。

この中には事前にグループ内で保険料をプールしておき、余ったお金をユーザーへキャッシュバックしたり最初に選択した団体へ寄付するタイプのものもあれば、相互宝やわりかん保険のように必要な金額だけを後で徴収するタイプのものもある。その他にも各サービスごとに細かな違いはあれど、畑氏いわくP2P保険に共通するもっとも重要なポイントは「透明性」だ。

「余ったお金を保険会社が全て手にするのではなく、透明性を持った上でユーザーに返還したり寄付をする、もしくは事後的に必要な分だけを徴収する。これまでは透明性の少なさが保険の課題でもあった。ユーザーにとっては何となく難しくて(保険会社が)どれだけ儲かってるのかも見えづらかった部分をクリアにしていくのがP2P保険のポイントだ」(畑氏)

P2P保険サービスはビジネスモデルの構造上、ユーザーと保険会社の利害が一致する点も大きい。従来の保険会社は保険金の支払を抑えるほど自社の利益が増えるため、ユーザーと敵対的な関係性になりがちだった。一方P2P保険の場合は保険料の一部を管理費として受け取る形が基本。特にあと払いタイプの場合は保険金が支払われる際に初めて事業者が収益を得られるため、両者が同じ方向を向きやすい。

以前も紹介した通り、P2P保険の仕組みは開業前から畑氏が熱望していた仕組みだった。当初はスマホ保険にこのモデルを導入することを目指していたが、同様の保険スキームは国内で実例がなくすぐに実装することが難しかったために断念。「保険業法の適用除外規定」に該当する範囲内でユーザー数や期間を限定してテスト的に提供するに止まっていた。

「何とかして絶対に実現したいと思っていた時に相互宝がでてきて、見た瞬間ヤバイなと。毎月1000万人ぐらいずつ加入者が増えるというすごいスピード感と、革新的なスキームに衝撃を受けた。これを日本でやるとしたら自分たちしかいないし、誰よりも先がけてやらなければとの思いでサンドボックスを申請した」(畑氏)

がん保険から国内におけるP2P保険モデルの確立目指す

justInCaseとしては2020年の前半を目処にわりかん保険のリリースを計画している。がん保険でしっかりとP2P保険のモデルを実証できれば、ゆくゆくはこの仕組みを他の保険にも広げていく方針。将来的には「わりかん保険」を1つのカテゴリーとして確立させることも目指す。

「(ユーザーとリスクをシェアする構造上)P2P保険はある程度の人数の母集団が見込めれば、カスタマイズした保険商品を作れる。従来はリスクが高すぎて企画段階で頓挫してものや、高いリスクを正当化するために保険料が非常に高額になり販売が難しかったようなものなども含め、新しいマーケットを開拓するような挑戦をしていきたい」(畑氏)

そういった数年先の展開を見据えた上でも今回のラウンドはとても大きな意味をもつという。同社の事業の広げ方は自分たちでどんどんユニークな保険商品を開発し、それをパートナーとなる各事業会社の協力も得ながらエンドユーザーに届けていくというもの。現時点で公開できる事業連携の話などはないとのことだが、ファミリーマートや保険の窓口など強力なオフラインチャネルを保有する伊藤忠商事を筆頭に各社との連携も視野には入っているだろう。

また資本関係はないものの、第一生命とは保険APIを活用した事業上の取り組みを始めているほか、先日にはライフネット生命保険と業務提携を締結するなど保険会社との連携も進めている。中には少額短期保険という枠組みでは実現できないサービスもあるため、その領域はjustInCaseTechnologiesを通じたAPIの提供や保険料計算アルゴリズムの提供という形で、既存の事業者と一緒にアップデートを図っていくという。

Source: TechCrunch Japan
リスクをシェアする「P2P保険」本格展開へ、ITで保険業を変えるjustInCaseが約10億円調達